イギリスでのビジネスの始め方全て – その② –

ソーホーロンドン

81回目の投稿になります。

 

前回の記事ではイギリスでビジネスを起こす際の会社登記・物件の種類についてを書きましたが今回は物件を決めてからの契約、交渉、ビジネスを始めるまでを紹介していきます。

 

HORACE ANDY / FEVER

 

ビジネス・物件を買う

ビジネス、物件を買うと言ってもほぼ100%の確率で「三者での交渉」になります。

どういうことかと言うと、例えば僕がBARのオーナーだったとすると、元々の物件のオーナーが居て僕は物件の権利を「リース」している事になるんですね。

ではそれが「20年リース」だったとしましょう、僕が2010年から2020年まで10年間この物件でBARを経営した場合、リースの残りは10年になり、これを売る事になります。

では自分がリースを持っている時に切れるとどうなるのか?

これは元々の物件のオーナーと交渉し延長する事になりますが十分にリースを持ってるのが安心ですね。

PREMIUM

ビジネスや物件を手に入れる場合、売り手に必ず払わなければならない「プレミアム」と言うものが存在し、これはビジネスにいくらの売り上げがあるのか、エリア、顧客の質、ビジネスのジャンル、残りのリース年数など様々なことを考慮して売り手がつけるものです。

ビジネスを買う時にお金を払う対象はFIX&FITTINGS(お店についてくる家具など物件内にあるもの)とGOODWILL(企業が有するノウハウや価値、持っている顧客)と2つの事に対してお金を払う事になり、後者のGOODWILLというのがプレミアムの大半を占める事になります。

 

バー、パブがプレミアムの最も高額なものですが本当に小さい地下のバーなのに立地がロンドンど真ん中のため2 億(!!)などと言うふざけたものもありますし、酷い場所にあり潰れそう(もしくは潰れた)ためとても安かったりと様々です。

必ず会計を見せてもらい、適正にプレミアムが付けられているか調べる必要がありますし、嘘がないかを確認しなければいけません。

リースがあまり残ってない場合は値下げ交渉も出来ますし、大家側とリースのリニューアルをしてしまう、など様々な方法があるので調べて実際に手を付けてみるまでは可能性は無限です。

このため家賃などに納得出来てもプレミアムに手が届かず買えない物件というのもたくさんあります。

 

嘘や隠している事があったりもするのでキチンと調べないと物件の内容でも何か落とし穴があるかもしれません。

ソリシターの重要さ

英語で「SOLICITOR」を日本語訳すると「弁護士」になりますが、裁判に出る弁護士は「LAWYER」であり、僕も上手く説明出来ませんが、とにかくソリシターという人達が居ます。

これはビジネス売買や物件の契約の時にソリシターを必ず通さねばならない事になっており、会社を設立する時の会計士と合わせて必ず必要になります。

会計士は会社登記の時にすぐ見つけるはずですが(別に自分でやっても大丈夫ですが、手続きを丸投げしても日本円にして1万円もかかりません)、ソリシターは物件と同時に探し始めるのが良いと思います。

一般にビジネスを買う場合、セット料金として数十万円でサインをするところまでやってもらえますが中には一回一回のメールや電話の時給換算で請求するソリシターもいますがそういう奴等には金持ちしか相手にしないロクなのがいません。

お金がいくらでもあれば高い人を頼むのが楽でしょうが最初は色々理解するために丸投げをせずに一緒にやるのが良いかもしれません、カレーの「CoCo壱番屋」やロンドンにある日本から来たラーメン屋などは任せているそうですが僕は絶対に騙されたくないですし自分が何をしているのか全て理解したかったですね。

それに「なんでそんな簡単な事に金がかかるんだ」と思うのでいつも値切り交渉をしていました(笑)

 

他に注意しなければいけないのが、デポジット(日本語では手付金?)で決してビジネスオーナーに直接支払ってはいけません。

お金は売り手のところには直接行かないようになっており「買い手→買い手のソリシター→売り手のソリシター」とここで止まる事になっており、「ビジネス・オーナー」のところに彼、彼女のソリシターから「買い手が手付金入れたよ」と連絡が行き、支払いが証明される事になっています。

因みに大家側が物件を管理会社に任せている場合は社内ソリシターがいるので担当のエージェントと常に連絡を取り合う事になります。

ソリシターも人間なので親身な人や、大家側やビジネスオーナー側の言い分が筋が通っていないと本気で言い返してくれる人もいるのでこういうソリシターと出会えると嬉しいですね。

ビジネス・物件交渉に入る

ビジネスオーナーに対して「良い奴」を装って仲良くなれれば直接交渉をするのが確実に早くなり、二人で話し合った金額、契約内容を合意した上でお互いのソリシターに報告すればこれだけで数ヶ月は交渉期間を縮小する事が出来ます。

 

どう言うことかと言いますと例えば僕が「買い手」の場合、「リースの売り手」であるビジネス・オーナーが「物件のリース」をしている大家に僕の事、物件を売る事を伝えます。

その後ようやく僕(無視される事もありますが)、もしくは僕のソリシターが大家のソリシターに連絡を入れます。

 

イギリスでは当人同士が直接やり取りをする事は出来ず、必ず双方のソリシターを介して連絡を取り合う事になっておりそのため前述した法外な金額を取るソリシターが現れたり、簡単な質問を一つするだけで「僕→僕のソリシター→大家のソリシター→大家」と伝わり同じ経由で答えが返ってくるため答えをもらうのに1週間待つ事もありこの国での「交渉」はとても長いものになります。

このため家賃交渉が1年かかったりという事や返事を見落として数週間無駄にした、など問題が起きますがここの時間がかかるのは割り切るしかありません。

これは伝統で現在はEメールという便利なものがありますが手紙でやり取りをしていた時代は更に時間がかかっていたそうで想像すると恐ろしいですね。

 

この「交渉期間」を一気に短縮する事も出来ますが違法なのでまたの機会に書こうと思います。

 

物件の契約

 

家賃交渉、リース年数、使用目的などの交渉を「大家側」と終えたとしましょう。

発生する支払いは「ビジネスオーナーへのプレミアム支払い」「自分のソリシターへの報酬金」だけのはずですが、交渉中のどこかで「ビジネス・オーナーのソリシター報酬金の支払い」というのが出てくるかもしれません。

「は?」と思うかもしれませんがなぜか売り手は何も払わなくて良いようになっている事が結構頻繁にあるので注意が必要です。

おそらくいよいよ、という契約前には買い手、売り手、大家エージェントの三者で会う事があるかもしれません。

その時に色々と直接最終確認が出来ます。

自分が「買い手」の場合、大家側とは契約書にサインを交わすだけなのでお金のやり取りは無いので(手数料が必要な場合もあります)、ビジネスオーナーがお金を受け取ったのを買い手のソリシターが確認し鍵を貰えば物件はめでたく自分の物になります。

 

ここまでの交渉や流れはどこの物件でも同じだと思うので次回は物件を手に入れビジネス登録から実際にBAR営業を始めるまでを書こうと思います。

 

お付き合いありがとうございました

 

Jay