ロンドンで教わったミュージシャンとして生きるために一番大切な才能と世界で一番クールな事

トラファルガースクエア

49回目の投稿になります。

 

写真はトラファルガー・スクエアというところです。

初めてイギリスに来た2002年、まずはロンドン南部にあるケント地方という所に1ヶ月間集中的に英語の勉強をしに行き、その後ロンドンに来た時に初めて訪れたのはこの広場でした。

 

AVERAGE WHITE BAND/ PICK UP THE PIECE

 

音楽の専門学校に通っていた時、「ドラム・コンセプト」という授業があり担当の先生はこのビデオのバンドの他、ジャミロクワイのために叩いたこともある恐らく僕が50年練習しても敵わないであろう物凄いドラマーでした。

どのクラスにもドラムセットが置いてありまず先生が手本を見せて説明をし、10人の生徒が交代で順番に演奏するというのが授業の流れでした。

普段は先生の説明が終わり「じゃ、ドラムセットに座るのは誰だ?」と言うと名乗り出た人から叩いていきます。

 

ところで僕はこの学校に入る前にもっと英語を勉強しなかった事を激しく後悔しています。

というのも先生の言っている事は半分くらいしか理解出来ず、テストの内容すらクラスメイトに確認せずにはわかりませんでしたし、英語が話せなくて会話が出来ないため勝手にシャイな人間だと思われていました。

 

話は逸れましたが、「ドラム・コンセプト」という授業担当のTOMという先生の授業を受けていたある日、授業内容は先生の手本を見ているだけで鼻血が出そうなほど難しいものでした。

 

説明の後、いつものように「次ドラムセットに座るのは誰だ?」と先生は言いますがその時は難易度のあまり誰も手を上げる事は出来ませんでした。

 

生徒の顔を一人一人見まわしお決まりのセリフをもう一度言いましたが生徒は沈黙したままです。

その時先生がスティックを地面に叩きつけて怒鳴りました。

TOM「テメー等、マジでクールじゃねぇな!ダサくて吐きそうだぜ!」

生徒「・・・・・・。」

TOM「俺にとって世界一クールじゃない事はな、毎日会いたくもねぇ奴の顔見に会社に行って、座りたくもないデスクと向かい合って、訳もわからず一日が終わる生活を送る事だ。」

生徒「・・・・・・。」

TOM「俺にとって世界一クールな事は朝起きて自宅スタジオでドラムを叩いて、彼女が淹れてくれたコーヒーを飲みながら『今日はお前らに何を教えよう?』『今夜はどんなステージになるかな?』と考える毎日が刺激的な人生だ。オメーラのクールは知らねぇけど、クールになりたくてドラムやってんだろ?親が学費払ってくれてんだろ?」

「・・・それで、ドラムセットに座るのは誰だ?」

 

皆んなが一斉に手を挙げましたが、恐らくあの中で今でも音楽をやっている人はいないような気がします。

 

同じ先生が別の授業中、練習をしてきていない生徒にブチ切れた時に言っていた事もとても印象的でした。

「99%の努力と1%の才能って言うよな?そんなもんこの世界にはねぇ。99%の運と1%の実力だ。99%は宇宙レベルの運だ。だから1%ってのも恐ろしいほど大きい1%なんだ。そこを突き詰めるのがミュージシャンだ。練習出来ないならやめろ。」

この先生がさらに続けました。

「ミュージシャンに一番必要な才能ってのはな、楽器を演奏する才能でも曲を書く才能でもない。『自分の才能を信じることができる』才能だ。」

この先生の授業が衝撃的過ぎ、自分の才能を信じられなくなった19歳の僕は音楽を辞めかけました(笑)

まさに「ドラム・コンセプト」な授業でしたが、彼ほどのドラマーでも音楽だけでなく学校で教えなければいけないという事実も衝撃でした。

今ロンドンのJAZZの第一線で活躍するミュージシャンの中にもやはり学校で教えている者もおり、僕のバンドの黒人のベーシストも音楽専門学校ベース科の先生でした。

 

今イギリスではコロナと付き合いながら、更に差別をなくすために学校教育を変えようというニュースが多く流れており、自分がロンドンの学校に行っていた時の事を思い出し書いてみました。

 

お付き合いありがとうございました。

 

Jay